Last-modified: 2003-12-01 (月) 15:47:20 (7449d)

Children committing suicide

1995/02/28

 ’94年の下半期には、高校生、中学生、あるいは小学生の自殺が再び話題になった。ASKAの「はるかな国から」という曲の歌詞にもある通り、”テレビやラジオや新聞は、涙を誘いかけては大人の目を持ち出して罪の行方を探して”いた。はっきり言って、あの時の一連の報道に、僕は激しい憤りと失望を感じた。

 テレビのニュース、特にワイドショーは、子供の死をおもしろがっている様にしか見えなかった。まるで、メロドラマのように。友人が泣き、菊の花が供えられた教室を映してみたり、「イジメには、まったく気付きませんでした」とひたすら述べる校長先生を罪人に仕立てあげるような編集の仕方をしていた局もあった。親族の涙にフォーカスを合わせて、大切な事はぼやかしたまま。そして、次の日には、芸能人の結婚・離婚と政治家への文句ばかり。

 余談だが、フジテレビは昼下がりのワイドショーを、それらしくない番組に変えた。反して、TBSはますます品の無いものになっているようだ。見ている人はどう思っているのか知りたい。

 話を戻そう。

 阪神大震災の数日後の”鶴瓶・上岡パペポTV”で上岡龍太郎が、熱を入れてしゃべっていた。「今のテレビには、変なsentimentalismはあるけど、humanismは無い。」僕も実感として本当にそう思った。

*ついさっきまで、死者が埋もれていた、いや、まだ埋もれているかもしれないガレキの上に立って、平然としゃべるレポーター。

*ガレキに挟まれて、動けずに、食べることもできず、声を振りしぼって助けを求める人がいても、ヘリの爆音にその声はかき消されて、助かる命も助からない。

 他にもいろいろあるが、一番言いたかったのは、”現場のための報道をしてくれ”ということ。まだまだ被害が続いているときに、どっかの大学の教授を呼んできて、「こんな地震が東京で起こったら、」なんてやってるTV局の神経は普通じゃない。被災地では、新聞よりもラジオよりも、何よりもTVが一番の情報源だった。これは、その後の調査でもはっきりしている。被災された方々は、上空から火事を映すだけのTVを見てどう思ったろう。知りたいのは、地震の凄さや、被害の規模や、これからの地震対策ではない。現場でどうすれば、一人でも多くの命を助けられるか。また、どうすれば生活物資を受けられるか。自分達はどういう行動をとればいいかということ。つまり、けがの応急処置方法や、危険な場所と非難経路、そして人手を求めている場所の指示などである。これらに関するテレビの報道は非常に遅く、はっきり言って、事が終わってからだった。

 話が大きくそれてしまったが、テレビはどうしようもないくらい人間らしさを失っているという事が言いたかった。猛烈に言いたかった。一番私達の身近にあり、ほとんど毎日接するメディアなのに。

 「イジメによる自殺」問題の時も同じ事が言えた。確かに、この問題の解決法をテレビで論議するのは難しいかもしれないが、そういう働きかけがあってもいいのではないか。少なくとも、現状の「誰が悪かったんだ」という視点よりは数段マシだと思うのだが。

 だから、少し考えてみよう。

 大人は大人社会の中で生きている。そして、子供もまた、子供社会の中で生きている。僕は中学生の家庭教師をしたりした経験があるから、そこで実感できたのだが、子供社会は、ある種、大人にたいして閉鎖的である。その社会の中に、大人の存在を一切許さない。そういう点で、子供っぽい大学生の僕は非常に曖昧だった。こんな性質があるからこそ「イジメ問題」は付け焼き刃では治らない。

 しかし、昔々はこんな問題はあまり取り沙汰にならなかった。

 僕がその時期を過ごしたのは、とても田舎だ。現在の都市なんかに比べると、子供の生活は非常に健康的だった。精神的にも。

 小学校では、休み時間になると、”ニンジン”なんていう遊びをやりに校庭へ跳び出していったもんだ。中学になっても、友人と集まって、定期テストの前日に、山道をサイクリングレースしたこともあった。( 病み上がりの僕は、途中棄権だったけど)そんな子供社会は、大人にたいして閉鎖的ではあったが、とても明るく純粋で、理想的だった。

 今の子供達の社会は、もちろん素晴らしい社会もたくさんあるだろうが、全体としては非常に複雑に変化してしまった。つまり、大人社会に近づいてきた。それだけでなく、大人社会の暗い側面を取り入れてきている。テレクラや売春行為など、大人社会の乱れつつある悪い風俗が、子供社会に浸透してきている。

 何故か?子供達は、子供のままで大人になろうとするからである。これは、避けられない。子供が背伸びしたがる風潮は僕らにもあった。

 子供達が背伸びするために必要とする情報を入手するのは、やはりTVやゲームである。

 TVは今や、「時代を映しだす鏡」ではなく、「時代を作り出す道具」である。大人社会の乱れは、TVが作り出し、増長させたといっても過言ではない。そんなTVを、大人になりたいと願う子供達が見るのである。TVの役割は非常に大きい。

 僕は、ヘアヌードを禁止しろとか、TVで男性や女性の裸を映すなと言っているわけじゃない。諸外国、特にヨーロッパでは、性に関する考え方が完全に成熟していて、日本のような問題は起こらない。だから、「芸術かワイセツか」なんて問題は、全く無意味である。日本人の未熟さを世界に公表しているだけだ。では、大人社会の乱れを正すために、日本人を成熟させるにはどうすればよいのだろうか。

 大人は何も考えずに、現代のpowerfulな子供達にただただ驚くばかりである。

 何か大きな変化がない限り、「イジメ」は今後も増え続けるのだろうか。


トップ   編集 差分 バックアップ 添付 複製 名前変更 リロード   新規 一覧 単語検索 最終更新   ヘルプ   最終更新のRSS